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「第一回 ポエトリー・ナイトフライト」を終えて

あいかわらず、マイクを持つと手が震える。
緊張というより不安だとおもう。
自分の言葉と立ち振る舞いには自信がない。

声はうまれもったものだからほめられても貶されても気にしない。
声が震えないのは場馴れではない。
先天性のものに責任は負わない。

しきです。

1月26日。chori主催の「第一回 ポエトリー・ナイトフライト」に参加してきました。
数年前、彼のオープンマイクの楽しさに魅了され、今回もオープンマイク枠にエントリーしたかったのですが、さすがの集客力……あっという間に枠が埋まってしまい、しかたなくスラムへ。

スラムってなんだろう。なんか治安悪そう。

よくわからないけど(いや、でも初心者にもわかりやすい丁寧な情報公開です)、ウェブサイトでの情報によると「オープンマイクは持ち時間5分でスラムは持ち時間3分。どちらも、言葉を用いたパフォーマンスなら何でもOK」とのこと。
うん。3分でじゅうぶんだ。
「スラムは投げ銭によって順位が決まる」らしい。
もらえるものはもらっておきたい。貧乏性だ。というか貧乏だ。
おまけに「スラムで1位になるとチャンピオンステージに出られる」とのこと。
自分がチャンピオンを目指せるのはポケモンぐらいだとおもっていたけど、最近買った「ポケットモンスター ソード」は一向にクリアできそうにない。
チャンピオンになりたい。

そうおもって、エントリーした初スラムでした。

イベントは、前半は勝ち負けのないオープンマイク、その後ゲストの詩の朗読、そしてスラムといった構成。

オープンマイク部門のほうはわりかしアットホームで、たいていそれぞれの演者のMCのようなもの(自己紹介)から始まっていた。
特筆すべき自分を持ち合わせていないので、こっちに出なくてよかったとおもってしまうほどに、皆さん、場をつくるのが上手でした。

(お友だちだけど贔屓ではなく)はったみさとの「パナソニック」がすきでした。
たぶん自分は、パフォーマンス性の高いものよりも、質素に言葉を吐く姿がすきなんだとおもいます。(これは芝居でもそうです。)

谷竜一さんに関してはわりと隠れファン的なところがあって、「あーずっと聴いていたい」とおもう隙もないぐらい圧倒されたり。

ゲストのずんやまずん子さんの朗読も聴けて、贅沢な時間でした。

そんな心地よい時間は過ぎ去り、スラムです。戦場です。

発表順は、8人中7番目のクジを引きました。
トリ前は気にしないのですが、最も恐れていた「女性に挟まれる」という事態が起きてしまいました。
男性のあとがよかったんです。

この日は父の誕生日でしたがそんなことを忘れて、じいちゃんの命日に書いたものを再構成したテキストを持っていきました。(まあ、父の誕生日をおぼえていたとしても、そこにあてたい作品はありません。)

結果は3位。チャンピオンにはなれませんでした。
悔しいけど、悔しいとおもえるぐらい真剣に挑めてよかったです。

choriさんに、テキストを読んだあとに「『お金がないよ』が吉と出るか凶と出るか」と、順位が決まった際に「『お金がないよ』が効いたかな」と評されました。
自分でもずるいテキストを持ってきてしまって嫌われるのは承知だったので、その声かけは(傷つくけど 笑)有難かったです。

ただ、あの場には、金の使い方を知っているひとたちだけがいたと信じていたいです。

あ、そうだ。寝太郎さん、素潜り旬さん、河野宏子さん、田中ジョヴァンニさん、ユーカラさん……久々に皆さんのパフォーマンスがみられて、とても嬉しかったです。

ポエトリー界、やっぱり面白いな。

choriさん、いつも素敵な場をつくっていただきありがとうございます。
一端の制作者として、あなたの足跡を辿っていきたい気持ちがあります。

記録として、スラムで読んだテキストを載せておきます。

遺産と賭け (2020 ver.)

ご飯食べてるの
大学はちゃんと行ってるの
一周忌には帰ってくるの
お金はあるの

築百年
田舎の家
軽トラ
地場産
灯篭
茶団子
靄と空白
白さ
脆さ
かたさ
つめたさ
珍しく雪が降り積もるこのまちの火葬場で
わたしたちの関係性は煙たがれる。

お金がないと言えば届く
米やりんごが詰められた段ボールには
もともとマルチ商法のシャンプーが入っていて
商業高校を卒業したくせに
お金の使い方なんてわかりやしなかった。

どんなにうまい米をもらったところで
ここの水で炊いても台無しだよ。
ゆうべは酔っ払って蕎麦湯飲まされてさ
いやそこは水を飲ませてくれ。

吐かせてくれ。

待合室のだるまストーブで時間をつぶしていたこと
電池切れで何も流さなくてもオーディオテクニカが耳を塞いだこと
今日も入れなかった教室
わざと出しそびれた願書
めくったことがない卒業アルバム

ぜんぶぜんぶ吐かせてくれ。

今ではあのときとは違うひとが水を飲ませてくれる(けれど、水で生きることはできても生きかえることはできない)。

「ご飯食べてるの」
「大学はちゃんと行ってるの」
「一周忌には帰ってくるの」

お金がないよ